劇団を始めてから10年が経ちます。

こうして何かを書いて読んでくださるあなたがいて、私は本当に幸せ者ですし、嬉しい気持ちでいっぱいです。

旗揚げした時、私は虚空を前にしていました。芝居でしかお客様と繋がっている意識はありませんでした。芝居ではなく、こうして文章を書いて、誰が読むんだろうと思っていました。

けど、今はあなたが読んでくれている。こんなに嬉しいことはないです。本当にありがとうございます。それだけで団体を10年も続けた価値があるかもしれない。

昔から「これからも走り続けます」と書いていた記憶があります。私はその当時の『これから』に今います。10年前を思い出すとなんとも遠くまで来た感覚がありますが、当時には想像もつかなかった景色をたくさん見ることができました。それもたくさんのお客様、そして、仲間たちのおかげです。

劇団を旗揚げして10年経つ今、私はやりたいことで溢れています。この感覚は旗揚げ当時を思い出すようなパワーです。

10年前は想像もしていなかった景色から、10年前には出会ってもいなかった仲間と、10年間一緒にやっている仲間とでまた新しい10年間を作っていきます。

今年は久しぶりに年に二本やります。一つは前から出している六月の公演。こちらは久々の本公演を久々の新作で。もう一つはまだ詳しいことは言えないのですが11月に小さいところでやります。

どちらも劇団を旗揚げした当時のような衝動を持って作ると思います。ただ、あの頃の私と違うのは、明らかにあの頃よりも私は強くなったということです。虚空だった目の前の景色に、今はこれを読んでいるあなたがいてくださる。それだけで力が湧きます。旗揚げの時から私を支えてくれているメンバーはまだ劇団にいて、さらにはこの10年で新しい仲間たちが増えています。たとえ、私が変わっていなくとも、あの頃よりもたくさんの人たちが私の周りにいる。だから、今の私はあの頃よりも強くいられます。

新しい10年は、より強い力で進んでいきます。そして、一気に過ぎてしまうのかな。そんな気がしています。その一瞬一瞬を鮮やかに。忘れられない人生の瞬間を劇場で共にできることを楽しみにしています。

今年もよろしくお願いします。

 

MacGuffins
演出 古田島啓介(Keisuke Kotajima)