※ザ・インタビューズで回答した内容を加筆修正し、再構成したものです。

横田純インタビューズまとめ

 

質問:
「今後、脚本として書きたいテーマはありますか?」
(2011年10月2日回答)

「これが書きたい!」というテーマは特にないです。毎回公演が終わるたびに探します。ひとつ公演が終わるたび「次のテーマ何がいい?」ってメンバーに聞くくらいです。

それにはいくつか理由がありますが、結局今ぼくが書く脚本というのは「数ヵ月後に行われることが確定している次の公演で板にのせるもの」であって、これから足を運んでくれるひとたちに何かしら届くものでないと意味がないのです。それは共感であったり、胸ぐらを鷲づかみにされるような脅威であってもいい。それがないと「あまりピンとこなかった」「つまらなかった」でおしまいになってしまう。客席に座るであろうひとたちが、何を求めていて、どんなものに興味があるのか。好みなんてみんな違いますから、いつも最大公約数を探るような気持ちでいます。

僕がつくりたいのは「できるだけ広い幅のひとたちが興味を持ってくれるであろうもの」なので、それは落ち込んでる人が多ければ重い気持ちを吹っ飛ばすような軽妙でハッピーなものだったりするでしょうし、ちょっと世の中に納得いかないぞって人が多かったらパンクみたいなカウンターカルチャーが必要とされるかもしれない。なので、いろんな人たちに話を聞いたり、いろんなものを見たりして、テーマになり得るものをいつも探しています。

あと、単純にぼくが書きたいものを書きたいように書くと高確率で没になって全部書き直し食らうんです。それが本当につらいので、最初に「テーマ何がいい?」って聞くんです。

 

 

質問:
「ライバルは誰ですか?」
(2011年9月30日回答)

マリオvsクッパ、悟空vsベジータ、有野課長vs鳥。ライバルの存在は展開に深みと盛り上がりをつくります。ポケモンも最初に自分の名前とライバルの名前を決めて始めますね。うっかり仲良しの友達の名前を入れてしまって、「オレは おまえ みたいな よわい やつ あいてに しない」とかすげーヤなやつになってるー!みたいなこともね、ありましたよね。

マリオカートのタイムアタックで、前にいいタイム出したときの走り方をそっくりそのまま再現する半透明のゴーストいるじゃないですか。ぼくのライバルはあれです。

 

 

質問:
「芝居を辞めようと思ったことはありますか?」
(2011年9月30日回答)

「やめよう」とまではいかなくとも「今はちょっと離れようか」と思った事はありました。それはまた戻ってくることを前提にしたものだったので、すっぱりやめようと思ったことはまだ一度もないと思います。ただ「やめるとしたらどんな状況か」というのは、よく考えます。

虚言癖とか妄想癖とか、ヒトにはいろいろな癖がありますが、ぼくのこれは想定癖とでもいったらいいんでしょうか。いろいろな状況を想像して対策を練って、というのを反射的に、思いついた分だけやっています。なんか企業みたいですね。たとえば「今足が動かなくなったら」とか「今ここに車が突っ込んできたら」とか「あいつが突然いなくなったら」とか。わりとどうでもいい設定ほど適当に、生活に著しく影響を及ぼす設定ほどまじめに考えます。想定癖とかカッコ良さげに言いましたが単に心配性なだけなんだと思います。

こんなこといつから始めたのか具体的には覚えていませんが、極端な話「この人と付き合い始めて、別れるとしたら一体どんな状況か」というのを付き合う前に考えたりもしていました。「これから付き合おうとしてる幸せなときに、別れることまで考えるなんてありえない!」っていうのはわかりますよ。わかりますけど、だって、どんなものにも終わりって来るじゃないですか。しかも多分それって突然くるんですよ。単純に性格の不一致ではいサヨナラ、とか、そういうのだったらまだマシですけど、金が、仕事が、病気が、両親が、人間関係がとか、わたしとあなたの気持ちだけではどうにもならないことも、ある。運よくこの先ずうっと一緒にいられたとしても、先にどっちかがいなくなる。大きな不慮の何かに一緒に巻き込まれたりしない限りは、ふたり同時にいなくなるなんてこと、ないでしょう?そんなふうに考えていけばヤなことなんて腐るほど出てくる。でも、付き合うんです。

そこまで考えた上での「でも」なんですよ。いろいろあるけど、それでも、やる。付き合う付き合わないっていう話をたとえとして出しましたが、なんのためにこんなにもたくさんのバッドエンドを想像しておくかというと、「つづけていくため」なんです。想像をめぐらせて、考えうる問題を先に洗い出しておくことで、突然のアクシデントにもある程度対応できる。だってその前に、自分で予測をしたわけだから。

「こうなったらきっと芝居を続けていくのは難しいだろう」という条件はあるにはあるものの、そうならないように僕ができることはしますし、仮にその条件を満たしかけたとしても、おそらくギリギリまでやめずに済む方向で粘ると思います。

 

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