※ザ・インタビューズで回答した内容を加筆修正し、再構成したものです。

横田純インタビューズまとめ

 

質問:
「演劇を始めるキッカケになった出来事は、どんなことでしたか?」
(2011年9月25日回答)

最初はお笑いをやりたかったんです。芸人を目指していました。

小学生の頃に「すごいよ!マサルさん」を読んで、つっこみというものの存在を知って、そこからです。つっこみっていいなあ、好きだなあ、人を笑わせるのチョーキモチイイ!もっとやりたい!よーしおれは芸人になる!って決めたんです。それなら、コントをやる時とかに演技力も大事だろうと思って、演劇をはじめたのが最初でした。

そしてお笑いの方は光の速さでドロップアウトしました。ずうっと人を笑わせることを考えていたら気が変になりそうだったからです。高校出たてでトンガっていた上に今より世間知らずで、しかも打たれ弱かったので「自分がおもしろいと思ったことがおもしろいと思ってもらえない」とか「あの人たちがやってるネタ、おれはつまんないって思うのに、ああいうのが評価されるのか」とか、まあものすごくベタな展開を経て、見事に自信なくなったんですね。今思えば自分がヘタなだけだったし、ネタの推敲も全然足りてなかったんですけど、当時そんなことに気づけるわけなかったので「お笑いキツい、やってて全然おもしろくない」って。コンビの相方は高校の同級生だったのですが、養成所に行くのだってこっちから誘ったも同然なのに、最後はおれが一方的に「やめるわ、解散したいんだ」っつって、おいお前自分勝手にもほどがあるだろ、というひどい展開。やっと幕が開いてよしこれからだ!と思った次の瞬間、唐突に訪れるラストシーン。本当に悪いことをした。なんて、今更言ってもしょうがないのはわかっているけれど。

でも舞台には立ちたかったから、笑いのことだけ考えなくていい演劇に、逃げるようにして戻ってきたのです。最初はお笑いやるための訓練だと思って始めた演劇でしたが、高校を卒業する頃には演劇そのものが「おもしろいな」と感じるようになっていたので、そっちの方がいいと思って、それからずっと続けています。

 

 

質問:
「劇団に所属されているみたいですが、どういう劇団なのでしょうか?他の劇団員と知り合った経緯なども教えてください」
(2011年10月1日回答)

芝居や演劇というものに興味がなく、日常ではあまり触れることがない方が「劇団」ということばを聞いてイメージするのはおそらく、劇団四季であったり、宝塚歌劇団であったりするのかなあと思います。それも「劇団」なので間違いではないですが、ぼくがやっているのはいわゆる、小劇場系というものです。

ダンスシーンや刀で斬り合うような殺陣はなく、5人から7人の役者がいくつもの役を兼ねてテンポよく演じ分けながら。セットがなにも組まれていないまっさらな舞台の上を、叫んだり走り回ったり動いたり止まったり、ジェットコースターのような展開を圧倒的な熱量をもって、コメディタッチでありながら、人間くさくもある出し物をお届けしております。

 

他の劇団員と知りあった経緯ですが、演出の古田島と出会ったのが一番最初です。彼は僕と同級生で、17の時に知り合いました。通っていた高校は違ったのですが、当時ぼくがお付き合いしていたひとと古田島が同じ小学校だか中学校だかに通っていたので、彼女を介してはじめて対面したのです。なんで会うことになったのかはもう忘れてしまいましたが。

その後も、たぶんプライベートでどこかに遊びにいったりとかは一度もしていない。たまに交流程度にいっしょに稽古をしたりとか、まあそれも確か二回とか三回とかそれぐらいしかやってません。高校のときはそれくらいの薄く細いつながりでした。その後ぼくは、同じ高校の友人とコンビを組んで芸人を目指して養成所に入ってしまうので、古田島との細い交流は完全にストップしました。連絡先すらまったくわからない状態に突入します。

まあ、でも、気になってはいたんですよ。芸人を諦めたぼくが劇団に飛び込んで経験を積んでいく傍ら、古田島なにやってんのかなぁ、というのはけっこういつも気にしていました。それはぼくが本格的に芝居をやろうと思って戻ってきたことも関係していたし、古田島は出会った時にはもう「演出をやりたい」と言っていたので、役者志望が多かったぼくのまわりでは異彩を放っていたからこそ印象に残ったのかもしれません。たまに名前をネットで検索してみたりして。ああ、あいつもどこか劇団に入ったんだ。芝居続けてんだなぁ。いつか一緒にやれたらいいよなぁ。とか、考えたりして。

しかしまあ、ぼくには今いる劇団でやるべきこともあるし、なにしろ連絡がとれないんだから、と思って特になにもせず、3、4年が経ちました。

休みの日に女の子と会っていたんですが、その娘の実家の最寄り駅までぼくの方から行ったんです。その娘の実家はその頃引っ越したばかりで、その時のぼくの住まいからも近かったから。冬だったのでとにかく寒くて。どこかお店にでも入ろうかって、駅の近くのハンバーガーショップに入ったんですよ。もうけっこう遅い時間で、そろそろ閉店間近だったのかな。店内にいたお客は今入ったぼくらだけだった。まあハンバーガーショップに入ったらとりあえずレジに向かいますよね。メニューはレジのテーブルみたいなところに置いてあるから多少目線下向きでいくわけじゃないですか。で、注文して、顔あげたら、うわこの店員でけえな、すげえ目つき悪いな、目がすわってて眠そうで……あれ、なんか見た事あんな、あれ?名札見たらコタジマって書いてある……ぞ?「あれ?もしかして、古田島くんじゃない?」「……はい」「うわー!!」っていう。キミこんなところでバイトしてんの!?まあ、そうだよね、考えてみたらキミの最寄り駅だもんね!

そういうびっくり再会があって、まあでも、そんなもの、久しぶりに会ったとはいえなに話していいかわかんないし、むこうは仕事中だし、こっちは人と来てるから。レジで注文して以降は一切会話ないわけですよ。で、そろそろ帰ろうかーって店を出たら古田島が店の外まで飛び出してきて、うわぁなにを言われるんだろうと思ったら「あの、今度芝居やるから、出てくれない?」

再会していきなりの出演交渉。
今思えば、彼が「人を見つけて引っ張ってくる」ということにかけての半ば強引ともいえる口説き落とし方と強烈な意志は、この頃から変わっていない。

その時2月だったんですけど、出てほしい公演は11月だという。ちょっと先だからわかんないなー、また連絡するよー、って言ってその時連絡先を交換して。たしかに前に「一緒にやれたら」って考えたこともあったよ。でもそれってこんなに突然で、びっくりするような巡り合わせで起こるものなのかい?

それでまあ、11月のその芝居に出たんです。そこに一緒にいたのが、マクガフィンズ結成メンバーである水越さん、相川くんです。

 

古田島、水越、相川は同じ大学の演劇部所属だったので、3人の出会いと交流はそこで行われていました。その出会いや交流にも、ぼくの知らないドラマチックな展開があったのかもしれませんし、たまたま知り合っただけかもしれませんけれど、それはわからない。出会いは偶然か、それとも必然か、みたいな話がありますが、ぼくと古田島が組んで、今こうして一緒に団体をやっているというここまでの流れには、ちょっと、陳腐な言い回しになってしまうかもしれないけれど、奇跡みたいなものを信じたくなってしまうものがある。

ぼくが高校の頃あの人と付き合っていなければ古田島と知り合えなかったし、再会したあの日だってあの娘と会うことになっていたのはあの娘がかわいいと思っていたからで、あの駅で降りたのはあの娘の実家がたまたま引っ越したからで、そもそも、あの時間にあの店に入らなければこんなことにはなってなかった。気が遠くなるような選択肢とパターンの中で、「これしかない」というものを「これしかない」というタイミングで発動。これが奇跡でなくてなんだっていうんだ!

古田島も再会当時、このときのことを「神様に背中を押されたのかもしれない」と表現していましたが、そう言いたくなる気持ちもわかる。彼も彼で、バイトをしながら11月にやる公演のキャスティングで誰を使おうか、と思案していて「今まで知り合った人の中で選ぶなら、この役はこの人がいいなぁ、今どこでなにやってるのかわかんないけど」と思っていた矢先に、そのどこでなにやってるかわからなかった男が自動ドアをくぐってレジを挟んで目の前にいた、というのだから。

 

 

質問:
「劇団をやっていて苦労したことはありましたか?できれば、具体的なエピソードを交えてお答えください」
(2011年10月3日回答)

これはどこまで話していいのかわからなくなる質問ですが、どんな仕事、どんな場所にも、みんなに開かれている明るい面と、あまりよそ様には見せられないような暗い面があるじゃないですか。たまにツライだけのところもあったりするとは思うのですが、それはまた別の話で。

ぼくは劇団も芝居もすきですし、できることならそればかりやっていたいと思うくらいたのしいものです。ただ、「Keep on Rock’n Rollで一番難しいのは、じつは”Keep on”の部分なのだ」ということばもあるように、続けていくことは、本当にむずかしい。脚本を書くのも公演を打つのも、か細い一本の綱渡り。まるでカイジでいう人間競馬。ひとたび足を滑らせたらそのまま音もなく消えていく、スターサイドホテルの鉄骨渡りのような。そんなイメージが頭の中に湧き上がる瞬間があります。

まったく夢のない記事をひとつ見つけたので、具体例としてこれを挙げさせていただきます。ぜんぜん普段は演劇とか舞台とか見なくても、一度くらいはどっかで名前を聞いたことあるような大きな劇団ですらこういうことが起こっているんですねー。

 

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