※ザ・インタビューズで回答した内容を加筆修正し、再構成したものです。

横田純インタビューズまとめ

 

質問:
「お勧めの音楽などはありますか?」
(2012年2月5日回答)

いわゆる「ロキノン系」といわれるものが好きです。その中でも、甲本ヒロトと真島昌利の関わるブルーハーツ、ハイロウズ、クロマニヨンズはずっと聴いてきました。さすがに毎日となると怪しいですが、おそらく学生時代から今まで甲本ヒロトの声をいっさい聴かなかった週はないんじゃないかなぁ。もはや「すきであることがフツウ」になっていたので特に語ってもこなかったんですが、活動期間が長くて曲が山ほどあるし、ベストアルバムですら何枚も出ているので、この機会に「わたくし一体どの曲がすきなんだろうか」と再確認しながら、わたくしのおすすめを絞っていきたいと思います。

 

まずブルーハーツをベストから聴く場合には、何枚かあるベストの中から「スーパー・ベスト」を推します。オリジナルアルバムには収録されていない「1985」と「シャララ」がまたよい。言わずもがなの名曲から隠れた名曲まで網羅しているアルバムですが、CMでも何度も使われて結構みんなどっかで聴いた事あるであろう情熱の薔薇が未収録なので、情熱の薔薇がどうしても聴きたい人以外はこのアルバムがいいです。スーパー・ベストでだめなら多分ブルーハーツはすきになれないんじゃないかなあ、とさえ思う。

オリジナルアルバムは「HIGH KICKS」とか「DUG OUT」とかから入ると少し戸惑うと思うので、1st、2nd、3rd…と出た順に聴くと安全です。そしてラストアルバムの「PAN」は聴かなくてもいいです。あれはビートルズでいうホワイトアルバムみたいなもので、メンバー個人個人がばらばらに曲を作って別の人と演奏してるので「ブルーハーツ活動末期 ~みんなのソロ活動全集~」みたいな位置づけです。ぼくは2nd「YOUNG AND PRETTY」がいちばん好きです。キスして欲しい!

 

続いて、ハイロウズ。ハイロウズをベストから聴こうと思ったら「FLASH」しかありません。「flip flop」「flip flop2」はシングルのB面やオリジナルアルバム未収録曲中心の裏ベスト的な扱いなので入口には不向きです。なのでFLASHになるわけですが、このベストは18曲入っているにも関わらず個人的には非常に物足りない曲構成なので「ベストに入ってないけどお気に入りの曲」を挙げたいと思います。

「ツイスト」(THE HIGH-LOWS)
「オレメカ」「シェーン」(タイガーモービル)
「コインランドリー」「不死身のエレキマン」(ロブスター)
「チェンジングマン」「彼女はパンク」「笑ってあげる」「バームクーヘン」(バームクーヘン)
「NO.1」「パンチョリーナ」(Relaxin’ WITH THE HIGH-LOWS)
「迷路」「フルコート」「シッパイマン」「天国野郎ナンバーワン」(HOTEL TIKI-POTO)
「ななの少し上に」「映画」「一人で大人 一人で子供」(angel beetle)
「砂鉄」「ズートロ」「スパイダーホップ」(Do!! The★MUSTANG)
「即死」(flip flop)

オリジナルアルバムを1枚だけ選ぶならバームクーヘン。よく「無人島に持っていくなら」とか「墓まで持っていくなら」とかそういう言い回しで作品に対する愛着を語ることがあるけど、このアルバムはその領域。なんすかねこのアルバム通してヒトの生き様をうたう感じ。荒木飛呂彦の描く「ジョジョの奇妙な冒険」は主人公や環境を変えて今第8部、単行本はシリーズと通して100巻以上にもなりますが、作品全体をつらぬくテーマとして「人間讃歌」っていうのがあるらしいんですよ。ハイロウズのバームクーヘンにもそれと似たようなものを感じます。

 

そして現在活動中のクロマニヨンズですが、このバンドのすごいところは、どのアルバムを聴いても印象が全部いっしょなところです。まったくぶれてない。なのでどれから入っても大丈夫です。ぼくは特に「スピードとナイフ」と「恋におちたら」という曲がすきなので、「FIRE AGE」か「MONDO ROCCIA」をおすすめします。

 

 

質問:
「はじめて買ったCDはなんですか?」
(2012年3月6日回答)

はじめて買ったCDは小学生のとき。近藤真彦の「ミッドナイト・シャッフル」です。

クラスで銀狼怪奇ファイルがものすごく流行ってたんですがビビッて僕は見てなくて(だっていきなり首なしライダーと怖すぎるよ)、曲だけでも知ってたら話入れるかなとか思って。ちょっと聴いたことある曲調はなんとなく好きな感じだったので買ったのです。そういえばその時とんねるずの「ガラガラヘビがやってくる」も一緒に買いました。

当時はすきなアニメの曲とか、ドラマの主題歌とか、母親がまとめて借りてくるレンタルCDを録音したカセットテープを聴いカセットテープ!!!そんな時代でしたね。母親の車に乗るといつも松田聖子とか、ZARDとか、今井美樹とか、相川七瀬とかが流れていて。A面が終わったからB面に入れ替えてとか。母親が聴いていたものではドリカムの「LOVE LOVE LOVE」が、父親が聴いていたものでは玉置浩二の「田園」の印象が特に強いです。積極的に聴くというよりは、勝手に耳に入ってくるものだったなあ。テレビの前にスタンバイしてカセットデッキの録音と再生のボタンを同時にえいやって押して息を潜めてアニメの主題歌を録音するとかそんなこともやってました。なに録ったかなー。スラムダンク録ったのは覚えてる。オープニング曲は「ぜったいに誰も」の方が好きだった!

まともに音楽を聴き始めたのは中学の終わりから。たまたま家に置いてあったビートルズ赤盤・青盤をずっと聴いていました。それを聴き始めたのも当時全盛期だったウッチャンナンチャンのウリナリで、内村と勝俣がモテないブラザーズとしてビートルズの「Let It Be」をピアノで弾く企画があって、それで気に入ったので最初はLet It Beの入ってる青盤のDISC2ばっかり聴いてた。だから自然とLet It Beの前後に入ってるオクトパス・ガーデンとアクロス・ザ・ユニバースも聴く回数が増えて、だんだんDISCの頭から通して聴くようになって、次は赤盤にいってっていう流れでした。すきな人ができると恋愛に関する歌とか聴きたくなりますし、歌詞に共感してせつなくなったりしますが、当時のぼくが聴いていたのはいかんせんビートルズだったので、中学の終わり頃すきだった人にはAll You Need Is Loveの歌詞とか引用して「愛こそがすべてなんだよ」とかメールで送ったりしていました。なんということでしょう!顔が!顔が燃える!(こっぱずかしくて)

趣味趣向は年をとるうちに変わっていくものだとは思いますが、やっぱり中学から高校、ハタチくらいまでの多感な時期にふれたものには強烈な思い入れがあって、その頃に見てきたものや聴いたものが今の自分のベースになっているような。気がします。

 

 

質問:
「芝居の向こう側にご自身のどのような未来を見ていますか。描いていますか?」
(2011年9月27日回答)

「芝居とは死ぬまでの暇つぶし」とか「未来への切符はいつも白紙なんだ」とか、どっかの誰かが言いそうなことを想像しては「こういう質問にはどう答えるのがかっこいいんだろうなぁ」とか考えてしまうのですけれども、ぼくの思いつくかっこよさげなフレーズがどれもヒドイので普通に答えます。ちなみに「死ぬまでの暇つぶし」というのはみうらじゅんの言葉、「未来への切符は~」は内藤泰弘『トライガン』からの引用。

毎日、本を読んだり、映画をみたり、どこかへ出かけたり、だれかに会ったりして過ごしていく中で、急に「今、どうしてこれをやってるの?」と聞かれたとき、「おもしろそうな脚本を書くためだよ」とか「引き出しを増やすためだよ」とか「もっと体をコントロールできるようにするためだよ」とか、やることのほとんどを芝居につなげて、そのまま芝居に還元しています。「芝居をやること」を前提にした生活ですね。

心臓を思いっきりえぐられるようなキツいことも、あきらかに運が悪いとしか言いようがないことも、芝居をやっていると「まあ、そういう経験ができたからいいか」ってなるのです。実際生活する上では全然よくないし、ダメージが軽くなるとかそういうことではなくて、本気で傷つくし本気で落ち込みます。ただ「そういうものを発信するときに役に立つだろう」と。できることなら忘れてしまいたいこの気持ちを再利用する用途があるからこその「まあ、いいか」です。ほんとうに悲しくて涙がとまらないときに「へぇ~、おれ、こんなふうに泣くんだぁ」「こんな気持ちになるんだぁ」「こんな喋り方するんだなぁ」って、いやに冷静な自分が、そのときのことを覚えている。それをそのまま、芝居上でやったりします。そんなことをやっているから犠牲になったものも、少なからずあったように思います。

次に来るのがどんなものかはわからないけど、選べるのは「何を捨てるか」だけで。なにも捨てなくても、なんて思うんですが、捨てなきゃ捨てないで身動きとれなくなる。それで何を捨てようかなって思った時に、いつもモノサシになるのは「芝居」だったので、なんか芝居のせいにしているみたいですが、そう聞こえるとしたら悪いのは「芝居をモノサシにしているわたし」であって芝居は何も悪くない。

まわりの人が楽しそうにしているとすごくうれしくなりますし、できうる限りそうしたいと思っていますが、あっちを立てればこっちが立たずといいますか、そのためにまわりの人をつらい状況に追い込むこともあるので、強烈な自己矛盾を抱えながらずっとやっています。「あなたは他人と深く付き合ったりしない方がいいんじゃないか」と言われたこともありますが、そんなこと言われても芝居はひとりじゃできないし、なにしろそこまで「ほんとうにひとり」だったら寂しいだろう。おそらくこの先もぼくは誰かといっしょに、他人に対してなにか仕掛けをうって、笑ったり落ち込んだりしているんだろうと思います。その時まわりにいるのが、今いっしょにやっているマクガフィンズがらみの面々であったらいいなと思っています。もちろん、あたらしい出会いにも少なからず期待しながら。

 

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