※この作品紹介は、2013年8月に行われた過去公演ノーカット全編配信イベント「MacGuffins Night」の際に執筆したものです。

MacGuffins Night #4「何度もすみません」
2013.8.16(Fri) 22:00 ON AIR.
MacGuffins Ustream channel

 

「ひとりだとさみしいから、だれかと一緒なら、いいね」

 

発想、ストーリー、台詞のキレ、リズム、笑い、映像とのバランス、
どれをとっても益々洗練され、他劇団にはない個性として磨きあげられている印象。
ギャグの一つ一つに客席から瞬時に笑いがおこり、
観客が次第に前のめりになって楽しんでいるのが空気で分かる。
平均年齢は20代後半、という感じだが、断じて「仲間うち」という雰囲気ではない。
私は、MacGuffinsがここまで的確に観客を引き込み、
劇場空間そのものの緩急を自在に創り上げていることに驚嘆し、感動した。
(ミドル英二、CoRich舞台芸術「何度もすみません」レビューより一部抜粋)

 

最高に楽しい舞台で、楽しい時間を過ごしました。
面白いストーリー、スピーディーな展開、役者さんの熱い演技!
そして面白可笑しい役者さん達の動きが笑えて、特に水越さんの動きは、
可笑しすぎて涙が出てきました。実際には、涙が流れていました。
周りの観客も、本当に楽しそうに感じました。
可笑しいだけではなく、切ない気持ちになる所、感動する所などもあり、
とても素敵な舞台だったと思います!
涙が流れるほど笑わせてくれたこの舞台は満点でした!
(こばひろこ、CoRich舞台芸術「何度もすみません」レビューより一部抜粋)

 

知人に誘われて観劇したのですが、終わってみたら知人よりも私の方が興奮していました。
今まで見たタイムトラベル・タイムリープものの中で一番よかったです。

本がすてきでした。
過去に戻るという設定自体はタイムトラベルもののお約束ですが、
そこに「びっくりすると」という制約を足しただけで、
ここまで面白くなるのか…と私がびっくりしました。
(あかちゃ、CoRich舞台芸術「何度もすみません」レビューより一部抜粋)

 

オーバーリアクション気味の派手な動きと台詞回し、
シュールな展開と次々と繰り出される笑いのネタはコントのようで爆笑の連続。
周りもドッカンドッカンウケてました。
演者さんがとにかくパワフルで、とても勢いのある舞台でした。
終盤には驚きの展開と思わずジーンとなれる結末が用意されてて
メリハリの効いたお話になっていたと思います。
(とち、CoRich舞台芸術「何度もすみません」レビューより一部抜粋)

 

 時間が巻き戻る時の演出と役者さんの動き、
それに合わせて変わる照明や音でぐっと引き込まれました。最高でした。
志村は自分のことを人間のクズといって同名の小説を読んでいましたが、
その気持ちを想像したらとてもさみしい気持ちになりました。
ずっと自分を責め続けていたのかなと思った時、
それってすごく人間らしいなと感じて、うまく言葉にできません。
(トモナガ、CoRich舞台芸術「何度もすみません」レビューより一部抜粋)

 

物理学を修めた人が観たら、物理的に在り得ないような時間論のミスはあるが、
その辺り、映像と実演を巧みに用い、

イメージとして見事に昇華していることで勘弁して欲しい。
殊に、自分の意思で過去に戻ることを決めた志村が、
時間を遡るシーンでのモノクロ映像と演技のコラボは秀逸なのだ。
(ハンダラ、CoRich舞台芸術「何度もすみません」レビューより一部抜粋)

 

「問題。まったく同じ日、同じ時間に、あなたの好きな人と、あなたのことを好きな人との待ち合わせがあります」
「さあ、どうする?」

 

会えないときのために、こんにちはこんばんはおやすみ。
マクガフィンズで脚本を書いております、横田純です。

四公演を四夜連続でユーストリーム配信するMacGuffins Night。
四夜目は、2013年5月に上演した「何度もすみません」です。

 

主人公・志村は「びっくりすると過去に戻ってしまう」という特異体質の持ち主。
戻ってしまう年月・期間は、志村本人のびっくりした度合いによって変わるのですが、
志村は一言でいえば「ビビリ」なので、非常にびっくりしやすいのである。

急に後ろから「ワッ!」っといって驚かされただけで2日間くらい戻ってしまうので、
くだらないことで何度も何度も過去をくり返しており、
「(志村からすれば)昨日とまったく同じ内容の話をしてくる友達」や、
「今日ようやく仕事をやりきったのに、過去に戻ってしまったせいで仕事ももう一度やり直し」など、
いつ、どんなタイミングで訪れるかわからない「コントロール不能のタイムリープ」のせいで、
毎日に嫌気がさしてしまったのでした。

日々を無気力にくり返していた志村にも、忘れられないことがある。
今どこで何をしているかもわからない、大好きだった女の子。
高校時代に実らなかった初恋。
実らなかったのは志村がビビってアプローチを諦めたせいだけど、
そのせいで10年もの間ずっと心に残り続けてきた、苦い思い出!

叶うなら、あなたと一緒にいたい!
くり返す時間の渦の中で、もう一度あなたと会えたらいいのに!

 

「おれはたぶん何も変わってないけど!! もう、逃げない!!」

同じ時間がくり返す「ループもの」の話が作りたくて、
いろいろな小説や映画、アニメ、ゲームなどを参考にしつつ、構想をまとめていったんですが、
書き始めるまでのアイデア出しとストーリーの構築に、一番時間がかかった本です。

というのも、時間がループする物語には「細かな決めごと」が非常に多いのです。
たとえば、ループはいつ、どのタイミングで始まるのか。
ループする期間はどれくらいなのか。
ループしている原因はなんなのか。
ループしている最中に主人公は何を感じ、どんな変化が生まれるのか。
最終的に主人公は、ループから脱出できるのか。
脱出できるとしたら、どのような方法で脱出するのか。

「朝目が覚めたら昨日と同じ一日が始まった」というように、ある一日がくり返す話もあれば、
同じ10分間が何度も何度もループして30年もくり返す話もある。

主人公はループをポジティブにとらえているのか、
はたまたネガティブにとらえているのかによってもその後の展開は変わってくる。
ポジティブにとらえていれば「ループが楽しいからこのままでいたい」とか、
「ループを利用して何か目標を達成してやろう」というストーリーになるし、
ネガティブにとらえているなら「なんとかループから脱出したい」とか、
「もう絶対抜け出せないんだ、もうおしまいだ」といって、自暴自棄になったりする展開にもなる。
そういう細かな決めごとを、出演者7人の名前を見つめながら、身悶えつつも決めていったのです。
「このメンバーと環境で、どの設定にすれば一番おもしろくなるだろうか」と。

 

マクガフィンズの舞台には、ほぼ、セットがありません。
ワンシチュエーションものだったら絶対セットはあった方がいいから、
くり返す時間が10分だとしたら短い。

それなら同じ一日をえんえんくり返す話にしたらどうだろう。
まてまて、そもそもその一日がくり返してる理由ってなんなの?
うーん、なんかその一日に思い入れの強い人が不思議な力でくり返させてるとか?
そうするとその人は超能力者か、はたまた幽霊か何かか?

たとえばループするのは8月のお盆の時期で、
ループが起こる原因は死んじゃって幽霊になった友達が、何か伝えたい事があるから。
「すきだった」とか「あのときはごめん」とか何でもいいけど、
わだかまりを解消すれば、幽霊も成仏して笑顔でループ脱出、みたいな。
うぬぬ、なんか違うな……マクガフィンズらしくないような気がするなあ。
もっとバカっぽくバーンと時間が戻ってドーンと弾け飛ぶような設定ないかなあ。
とかね。そんな試行錯誤ですよ。

設定がまとまるまでは夜ずっとうなされていました。
夢までループしまくるくらいに。

 

ただ、それだけ迷ったということは「他にも面白くなりそうな設定が山ほどあった」という事に他なりません。
ループものの物語にはまだ可能性が山ほど眠っているので、いつかまた、時間がくり返す話を作ってみたいと思っています。

 

「あなたは今から、クイズ戦士です」
「クイズ戦士ってなんですか」

「びっくりすると過去に戻る」という類を見ないキッカケで起こる時間ループに加え、
「24時間クイズに答え続けなければならないクイズ戦士」という設定もブチ込んだ本作。
「あんなに要素を詰め込んで、よく破綻しませんね」と言われます。

時系列も入り乱れるわ、びっくりすることばっかり起こるわ、友達は暴走するわ、もう大変。
おかしな体質のせいで「過去」に振り回され、人生を諦めかけていた志村が、
なかばヤケクソで、ガムシャラに「未来」へ前進していく姿はひどく滑稽ですが、
いったん手遅れになってからじゃないと気づけない、人間らしさみたいなものが、色濃く出せた気がしています。

 

9月公演「赤鬼」へと続く、最新のマクガフィンズが観られる第7作目。
「何度もすみません」です。

どうぞ、お楽しみください。

 

 

2013年8月15日

MacGuffins 脚本 横田純(Jun Yokota)

 

 

※「何度もすみません」関連ページ

Cast Introduction(上演時に使用したオープニング映像)

演出、古田島啓介の「何度もすみません」前口上