※この作品紹介は、2013年8月に行われた過去公演ノーカット全編配信イベント「MacGuffins Night」の際に執筆したものです。
MacGuffins Night #3「僕から見れば僕が正しい、君から見れば君が正しい」
2013.8.15(Thu) 22:00 ON AIR.
MacGuffins Ustream channel
「大切な人を傷つけないことは、無理なのかもしれない」
全体を貫くのは“コミュニケーションの様々なかたち”だ。
饒舌なだけがコミュ二ケーションではない。
片方の自己満足だけでは、コミュニケーションとして成立しない事を痛切に訴えて来る。
激しい動きの中で早口の台詞の応酬が多いが、よく訓練されていることに感心した。
一人が何役もこなし、切り替えも鮮やか。
強靭な持久力で充実したストーリーを展開している。
映像の使い方も洗練されていて、身体能力と共に劇団の個性と言える。
(うさぎライター、CoRich舞台芸術 レビューより一部抜粋)
第一話からやられました。重いの好きな私としては特に。
でも、両極端なんです。 バカバカしい程楽しいのも好きだから。
人間てそう言う両極を誰でも少なからず持ちながら毎日を生きていると思っていて。
人生には厳しいことが多い。
まさにタイトル通り「僕から見れば僕が正しい、君から見れば君が正しい」
そこに着眼点を置いて脚本を書いた横田さんに拍手です。
(にこ、CoRich舞台芸術 レビューより一部抜粋)
この劇団の早いセリフ回しや舞台上をかけまわる姿、テンポや熱量は、
80年代の小劇場ブームの頃を思い起こさせます。
その頃のお芝居が好きなのでつい観にいってしまいます。
今回は数本からなるオムニバス形式の公演でしたが、
話の内容もわかりやすく、つい笑ってしまったり、つい考えさせられてしまったり。
90分が経つ頃には「しっかり観た」という倦怠感(満足感?)に包まれて、
足取りも軽くなったように思えるので不思議です。
声を張って走り回ってとにかく押しっぱなしではなく、
静かなところは本当に静かに引くところは引く、バランス感覚がいいです。
(Electron、CoRich舞台芸術 レビューより一部抜粋)
役者の熱量とハイテンションが小気味よく、観客をぐいぐい引き付ける舞台だった。
おそらく、この劇団の良さが存分に味わえる作品ではないだろうか!?
(らんぼる、CoRich舞台芸術 レビューより一部抜粋)
面白くて、可笑しくて、涙が出るほど笑って・・本当に楽しい時間を過ごしました。
ただ、5つのストーリーで構成されていて、最初と最後は重いテーマだったのですが、
それも全て楽しいテーマにした方が、個人的には好みです。
でも、全体を通じては、本当に大満足です。
水越さんの汗ダクダクで笑わせる姿には、可笑しくて笑いながらも、感動すら覚えました。
素敵な役者さんだな、と思いました。ちなみに、他の役者さん達も、みな良かったです。
この劇団の他の作品も観たいです!
(こばひろこ、CoRich舞台芸術 レビューより一部抜粋)
「君の名前を教えてやろう。君は天に選ばれた勇ましき戦士、ああああマンだ」
「なんすかそのゲームの主人公に適当につけるような名前。ちょっとホント帰って下さい」
会えないときのために、こんにちはこんばんはおやすみ。
マクガフィンズで脚本を書いております、横田純です。
四公演を四夜連続でユーストリーム配信するMacGuffins Night。
三夜目は、2012年11月に上演した「僕から見れば僕が正しい、君から見れば君が正しい」です。
長いタイトルですね。(23文字)
しかしこの公演は本当に、このタイトルがすべてです。
タイトルの元ネタは、ボブ・ディランの「One Too Many Mornings(いつもの朝に)」という曲から。
歌詞の一節に、こんな部分があるんですね。
It’s a restless hungry feeling
それは満たされない気持ちで
That don’t mean no one no good
何の良いこともない
When ev’rything I’m a-sayin’
僕が言うことはなんでも
You can say it just as good
君は同じようにうまく言える
You’re right from your side
君は君として正しい
I’m right from mine
僕は僕として正しい
We’re both just too many mornings
僕らは二人ともひとつだけ多い朝と
An’ a thousand miles behind.
千マイルを過ごす
曲全体を通して見ても非常に詩的でわかりづらく、解釈の分かれる歌詞なのですが、
その中で圧倒的な説得力を持っている「君は君として正しい」「僕は僕として正しい」というフレーズ。
みうらじゅんが描き、映画化もされた「アイデン&ティティ」でも引用されています。
この曲が収録されたアルバム「The Times They Are A-Changin’」は、なんと1964年発表。
50年前からこんな鋭いことを歌っていたのが、ボブ・ディランなんですね。
本当に、世の中って「君は君として正しい」「僕は僕として正しい」ことばかりです。
立場が違うから、見えている景色も違って、そのせいですれ違うし、わかり合えないことだってある。
その場を穏やかにおさめるには隠し事をする必要もあるかもしれない。
嘘をつかなければならないかもしれない。
全員が100%納得する結論なんてあり得ないから、軋轢も生まれるし、争いだって起こる。
でも。
それでもなんとか、あなたと一緒にいられたら。
「どうせわかり合えないのだから」と諦めたくはなくて、
もしも一度、関係が崩れてしまったとしても、互いが望めば、また同じ時間を共有できるんじゃないか。
それが、前とは違う形だったとしても。
客演メンバーにも恵まれ、過去に行われた公演では最多である11名が出演して、
昨今、さまざまな場所で叫ばれている「コミュニケーション」という言葉に、
まっこうからぶつかっていく5本のオムニバス・ストーリーです。
「一度嘘をついたら、その他の言葉は全部信じられなくなるんだよ!」
「そうやってごまかそうとしてるだけなんだろ!!全然ごまかしきれてねえからな!!」
同級生の少女と「今夜11時に親を殺す」という約束をし、
母親に暴力をふるう父親を刺殺してしまった少年が逮捕され、
刑事の前で自分のことを語るうち、目をそらしたくなる真実が明らかになる。
いったいどうすれば正しかったのか!「僕から見れば僕が正しい」
「基本的に人が出す嫌な臭いって脇の下とか、口とか、足とかから出ますよね」
「場合によってはデリケートゾーンなんかも、臭いの発生源になると思うんです」
「それを全部封じるという意味で『亀甲縛り』」
新商品、ヒトの匂いを消す消臭剤のネーミングに頭を悩ます会議の席。
様々なアイデアが飛び出す中、ふとした発言から口論がはじまり、果ては上司の秘密が暴露され、脱線につぐ脱線を重ねる!
事件は会議室で起きています!「会議は踊る」
「よい帰宅とは早さを競うものではない!その帰宅がどれだけ充実したものになるかを競うものだ!」
甲子園を目指す小宮山が野球部だと思って入部したのは、なんと帰宅部!
しかもこの学校、一度入部届を出したら3年間部活の変更は認められない!
苦悩する小宮山に、帰宅部の面々と、帰宅部の活動内容が襲いかかる!
どうすればいい?決まってる!
俺たちが一番ロマンティックになればいいんだ!「帰宅部全国大会出場」
「鞄教師エックスです」
「カバン教師ってなんですか」
自他ともに認める大嘘つき・草薙初郎が、弟の次春に借金を返すため、
弟になりすまして学校に就職した!まではよかったものの、
そこで「ハナデルマン語」という言語を教えることになってしまう!
ハナデルマン語をめぐって入り乱れる職場の嘘と、個人的な欲望!
人にはそれぞれ事情がある。
だったら俺はこの嘘を、本当にしてみせる!「コミュニケーション記号体系」
「それでも、ゆるし合って一緒にいることができたらいい」
かつて少女だった「女」は、かつて少年だった「男」に、ゆっくりと語りだす。
いったいあの夜、なにがあったのか?
これから僕らはどうしたらいい?「君から見れば君が正しい」
息もつかせぬ90分。
「希望の光がまったく見えない暗闇」と「天井知らずのバカを照らす後光のような明るさ」を、
ジェットコースターのような速度で行き交う濃厚なラインナップです。
脚本を書くにあたり、演出の古田島から、
「思い切り笑いを取りにいってもいい」と伝えられていたので、
陰と陽、完全にギアを切り替えて100%振り切り、演出の言葉を守りました。
結果、お笑いライブのスタッフとして活動していたお客様から
「マクガフィンズの笑いはコメディではなくコントだ」
「コメディはなんとなく作れてしまうが、コントというのは本当に面白くないと成立しないものだ」
というありがたいお言葉をいただきました。
わたくしもともとお笑い芸人になりたくて養成所にも通っていたので、感無量です。
お笑い芸人の方は非常に早い段階でドロップアウトして、
当時の相方に多大な迷惑をかけました。
かといって、あのまま芸人を続けていたら、この脚本は書けなかっただろうと思います。
さらに上演時には上記の5本に加え、「傘を盗む奴撲滅委員会」という作品もありました。
「明けない夜はないじゃない……!やまない雨はないじゃない!!」
「やまない雨はないかもしれないけど、今雨なんだからあたしは悲しいんだよぉぉおおお!!!」
好きな人ができると必ず別の誰かが先にその人に告白して、
目の前で失恋する事になる不幸な星のもとに生まれた女子・朝比奈と、
「女の子は芸術であり聖域なのだから自分などが触れられるものではない」と、
遠くから女の子を眺めて日記に書き続ける男子・町田が屋上で出会う!
雨が少しずつ強くなる中、そこに烈火の如く怒りながら飛び込んできたのは、
傘を盗む奴撲滅委員会を名乗る、西という男だった!
殴るんじゃなくてパンチします!
パンチっていう方がちょっとかわいい!「傘を盗む奴撲滅委員会」
ご紹介させていただくなら、こんな感じです。
残念ながら映像が残っていないため配信することができないのですが、
心から「残しておきたかった」と今でも思っています。
8月13日に行われた「MacGuffins Evening」において先行上映をした公演ですが、
そこでも劇場が大きな笑いに包まれるほど、ご好評いただいております。
さらに大きく前進した第6作目。
「僕から見れば僕が正しい、君から見れば君が正しい」です。
どうぞ、お楽しみください。
2013年8月14日
MacGuffins 脚本 横田純(Jun Yokota)
※「僕から見れば僕が正しい、君から見れば君が正しい」関連ページ
Cast Introduction(上演時に使用したオープニング映像)