Dialogues

脚本、横田純のインタビューズまとめ。第8回


※ザ・インタビューズで回答した内容を加筆修正し、再構成したものです。

横田純インタビューズまとめ

 

質問:
「おすすめの漫画、おすすめの映画など教えて下さい」
(2011年9月21日回答)

漫画からいきます。

■うめ「東京トイボックス」「大東京トイボックス」

ゲームをつくるひとたちのマンガ。ものづくりに対するエゴとか、でも会社としてもやってかなきゃいけないんだよってところも含めて、見ごたえ抜群。ゲームが好きでものづくりも好きなら絶対クるものがあるはずだ。でも単行本出るのおっそいんだよー。

 

■柴田ヨクサル「ハチワンダイバー」

豪腕、シンプル、ストレート。将棋漫画とは思えないファンタスティックでバトルな展開。とてもよいバカ達。でも将棋の部分もしっかりしている。検索すると出てくるけど柴田ヨクサルは女流棋士に勝ったことがあるとか。

 

■よしもとよしとも「Gratest Hits +3」

あの日高円寺のDORAMAでよしもとよしともの「青い車」を手にとってなかったら、ぼくの作風がちょっと変わっていたと思います。

 

■ハロルド作石「ストッパー毒島」

BECKもすごく好きなんですけれども。野球漫画です。「うそだろ!?」っていう展開とか、パワー勝負だけど努力の部分もきっちり書いてあるところとか。後半まで引っ張る伏線とか。あとヒロインかわいいよね。

 

■佐々木倫子「動物のお医者さん」

ちょっとタイクツだなって思った時に手に取りやすい軽いノリ。何度も読み直した。動物の生態あるある、獣医学部あるある、キャラ設定の破天荒さとか、おそらく知らぬ間に影響を受けたところ数知れず。

 

■藤田和日郎「からくりサーカス」

うしおととらも相当好きですが、どっちかしか選べないとしたらこっちを選ぶ。過去に飛ぶわ、別の人の話になるわ、いろんな人がいろんな要因でフクザツに絡み合って現代でこんなことになってるんですけどあなたどうします?っていう。あんな構造を組み上げられることがすごいし、それでこの話、泣けるんだからまたすごい。

 

■佐佐木勝彦「グミ・チョコレート・パイン」

大槻ケンヂの半自伝小説を原作に漫画化。BECKはどちらかといえばスタイリッシュなバンドマンガですけど、こっちは泥臭い方。だが夢がある!

 

■みうらじゅん「アイデン&ティティ」

これもバンドもの。峯田和伸主演で映画にもなった。バンドを通した生き様。「こうありたい」と「それじゃだめだよ」のせめぎ合い。現実って残酷だけど、それでもやっていくんだぜ!だってこれしかできないからな!

 

■山本直樹「安住の地」

どこなのかわからない。秩序もあるんだかないんだかわからない。不思議な場所での不思議なくらし。山本直樹はもともとエロマンガで出てきたひとで、このマンガに限らず大体の長編、短編で登場人物たちはことあるごとにセックスします。世界はエロありきだものね。

 

■いましろたかし「初期のいましろたかし ハーツ&マインズ+ザ★ライトスタッフ」

これはほんともうおすすめに入れるかどうか迷ったんです。アクが濃すぎるから。アクが濃いっていうか、アクをそのまま飲みなさいって言ってるようなものです。社会からあぶれたどこかズレた人たちが、精一杯やってる。でもなぜか読み返してしまうのは、ぼくがそんな遠くない昔、こんな生活をしていたからですかね。今もか?

 

映画は。

■「MONDAY」(2000年)

高校生の頃に見て衝撃だった。堤真一と寺島進と大杉蓮と田口トモロヲが好きになった。SABUのノリとテンションで、ぼくの作品の表層の部分がつくられています。

 

■「ポストマン・ブルース」(1997年)

堀部圭亮がいい。遠山景織子がかわいい。マクガフィンズでやった「punctum プンクトゥム」の脚本は、この話の構造をそのまま使っている部分があります。

 

■「トゥルーマン・ショー」(1998年)

ぼくのTwitterのプロフィールの部分にずっと書いてある「会えないときのために、こんにちはこんばんはおやすみ」はこの映画の日本語吹き替え版からの引用です。とても印象的なセリフ。

 

■「マルホランド・ドライブ」(2001年)

デヴィッド・リンチの映画はあらかた観たけど、これが一番すきである。ちゃんと観ないと、見逃すよ。

 

■「ユージュアル・サスペクツ」(1995年)

もともとサスペンスが好きなんです。どんでん返しが好きな方へ。

 

■「バタフライ・エフェクト」(2004年)

記憶と時系列をいったりきたり。ラストシーンが数パターン存在するけど、ぼくはなんだかんだ言って劇場版ラストが一番いいと思います。

 

■「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲」(2001年)

セリフなしでくり広げられるひろしの回想は圧巻。劇場版クレヨンしんちゃんには全てが詰まっています。温泉も戦国もカスカベボーイズも大好きだよ。

 

■「マインド・ゲーム」(2004年)

監督・脚本、湯浅政明。企画・制作、STUDIO 4℃。「キミハ シンドウスル エネルギー」ということばが忘れられない。アニメでしかできないことてんこもり。アニメでもそんなやってないことてんこもり。

 

 

質問:
「好きな漫画について語って下さい」
(2012年2月25日回答)

先ほどの質問でもお答えしましたが『からくりサーカス』が一番好きです。

ぼくは伏線フェチで、複雑に絡み合った人間関係であったり、隠された真実が少しずつ明かされていくみたいな話に「おおおっ!」ってなるのです。その上『からくりサーカス』は人間の生き様であるとか価値観が圧倒的なテンションと勢いで語られていくんですね。「これは、こうなんだよ!」という作者の美学やエゴが嫌味なく入ってくる。嫌味なく入ってくるかどうかは読む人の好みによると思うんですけど、魂削って描いてる感じがすごくする。胸をうつのはいつも必死な姿。

 

『ジョジョの奇妙な冒険』は第四部が一番好きで、『吼えよペン』『新・吼えよペン』の無軌道なパワーと説得力はすごいし、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は中川のキャラが危ないヤツ→できる男→暴走→キャラ崩壊と初登場時から破天荒なぐらい変わっているし麗子は絶対両ちゃんのこと好きだけど片思いだし、『すごいよ!マサルさん』のフーミンでつっこみを覚えてお笑いやろうと思ったし、『名探偵コナン』と『金田一少年の事件簿』は全部読んでいます。毛利蘭より灰原哀派。そういえば灰原がホテルのベッドに下着姿で寝そべってポテトチップかなんかを食べながら「みんな遅いわね」みたいなことをつぶやくコマがいつかどこかでありましたが、なんですかあのサービスカットは。「遅いわね」って今みんなが帰ってきたらお前下着だけどいいのか。光彦が真っ赤になって照れだすと思うのでやめてあげて下さい。あと連載序盤の蘭の水着は勝負しすぎだと思います。なんだあのカタチ。あと連載初期はムチムチだった美雪が最近どんどん垢抜けていって細身でさっぱりした顔になっている事に時代の流れを感じます。

『ジャングルの王者ターちゃん』とかもいいですね。ものすごくジャンプ黄金期の匂いがする。今では絶対描けない「男!」って感じの、くっだらない下ネタ。ちんこで空飛んでうんこしてパワーアップするからね。「パンツにえっちなシミがついてる」とか「ティッシュとエロ本持ってトイレにこもる」とか「まるめたティッシュを投げつける」とかもうね、時代だなー。いつの間にか梁師範と同い年になっていることにびっくりするんですが(26歳)ちょっと老けすぎじゃないか梁師範。30代だと思ってたよ。大会があるたびに適当な覆面かぶってターちゃん一行についてくる成金のアナベベも正統派弟子キャラのペドロもすごくいいなあと思うんですけど、この漫画には「バトル展開の時は太ったブサイクで、一話完結のギャグをやってる時はスレンダーな美人に戻る」という規格外のヒロイン・ヂェーンがいるのです。ヂェーンがスレンダー美人状態の時に「飲ませた人に対して性的欲求が高まって求愛をしだすほれ薬(ほぼ媚薬)」をターちゃんがヂェーンに飲ませるエピソードがあるんですが、それを飲ませてもヂェーンの態度が普段と変わらず、ターちゃんにプロレスの技とかをかけ出して「なんで!?」ってなるんですが、それを見たペドロが「ヂェーンさんは今でも先生(ターちゃん)の事を誰より愛しているよ。あれがヂェーンさんの愛情表現なんだよ」って言うっていうね。ほんと良妻。あとペドロ、きみは本当に性格と立ち位置が努力マンにそっくりだな。格闘技の知識にも精通しているので「そういえば……聞いた事がある」のテリーマンにも通ずる。

安定的に面白い冨樫義博『幽遊白書』『レベルE』『HUNTER×HUNTER』はもちろんのこと、ジャンプ黄金期には『ダイの大冒険』という、実は主人公はダイじゃなくてポップなんじゃないのか。これはダメ魔法使いポップの成長物語なんじゃないのかという、脇役が主役を完全に食うバトル漫画があります。マジで後半のポップのかっこよさったらない。中盤からその片鱗は見えてましたが、ラストダンジョン突入直前から最終決戦にかけては三枚目もこなせるイケメンポジションに滑り込んできます。そして泣く子も黙るメドローア!バトルもので子供の心をわしづかみにするためには、ストーリーがおもしろい事の他に「必殺技がマネしやすいこと」が大事だそうです。『ドラゴンボール』にはかめはめ波をはじめとする気功波系が山ほどありますが、それに比べると『ワンピース』のゴムゴムの○○はマネできないからちょっと厳しいよねみたいな話題をどっかで見た記憶があります。『ダイの大冒険』はこのメドローアですよ。超マネしやすい。その上、技の威力は作中屈指の破壊力。おそらくブラッディ・スクライドとアバンストラッシュ以上にマネされているんじゃないだろうか。

インチキSF人情もの西部劇『トライガン』『トライガン・マキシマム』を語る上で外せないのは8、9、10巻付近のウルフウッド。あのあたりは、そこだけ何度も読み返すほどすさまじい。内藤泰弘は作中で「やさしさ」「つよさ」「よわさ」なんかをふまえた「人生観や生き様」みたいなものをすぱっと浮き上がらせて、琴線にふれるセリフを書くんですが、それがまた!ね!いいんですよ!当時思春期だったぼくにはえらくいっぱい刺さりました。レム関連のセリフもいいなあ。それもすべて、ヴァッシュの人間くささあって引き立つものなので、ああ、ぼくは結局「人間くさいもの」がすきなんだなぁ、と思うのです。

ガンガン系列の『魔法陣グルグル』と『南国少年パプワくん』は好きとかを超越して、なんというか、染みついてしまっている。両方ともコミックスは今手元にないのにも関わらず、子供の頃に触れたインパクトがすごすぎたので全然忘れてないし最近もよく思い出す。「サルに触れると即死でス!」「なぜ!」とか「ここはわんわんののろい」とか「ここのばばあはよいばばあ」とか「肩の後ろの二本のゴボウの真ん中にあるスネ毛の下のロココ調の右」とか、いかにも魔法っぽく唱えた「ザムディン!」はうちのじーさんの名前だったりとか、あの頃の衛藤ヒロユキはキレキレだった。展開が急にメルヘンチックになる所とか非常にこっぱずかしいんですが「クサいセリフを聞くとものすごい形相で巨大化しながら現れるふんどしをつけた妖精・ギップル」という存在の発明によりギャグ部分とのバランスをとるという鬼才っぷり。『パプワくん』はというと、貸した4万円がなかなか返ってこなかったり、ブラコン兄さんという変なあだ名をつけられたり、主人公なのにずっと室戸市名物シットロト踊りを踊っていたり、ナマモノがいたり、そのナマモノは雌雄同体だったり色々ありましたが、柴田亜美の言語センスと傍若無人さは狂人の域だと未だに思います。それは『自由人HERO』とか『ジバクくん』とかを読んでもそう思う。

サンデー系なら『H2』『ガンバ! Fly high』『俺たちのフィールド』『DAN DOH!!』『MAJOR』とか、90年代から2000年代にかけて連載されてたスポーツものに当たりが多いです。『H2』のあだち充はあっさりした絵でセリフも少ないんですが、この人は登場人物の心象描写をセリフとして書かないんですよ。漫画だと「思ってること」もセリフとして書かれるのがもう普通のことですが、その人物が何考えていようが、口に出して何も言ってないときは、セリフも何も書かれない。絵だけで見せるんだけど、わかるし、その方がいい。ぜんぜんしつこさがない。この前コンビニ版『H2』をたまたま立ち読みしたら、風呂場に手を洗いに入った比呂がたまたま風呂あがりのひかりの裸を見てしまうシーンで、うわーこんなのあったわーと思いました。その後、似たようなシチュエーションで英雄が風呂場に入ったら今度はひかりの父親の裸を見てしまうっていう展開のカブセがありましたが、そういう事も自然にやってくるから、もうね、すごいよね。『俺たちのフィールド』はフランスW杯前後に連載されていたサッカー漫画ですが、あれ読むと異常にトレーニングとか基礎練とかやりたくなる。あと「日本代表って怖いんだぜ」「W杯ってキツいんだぜ」っていうことも描かれているので、そういうところも含めてオススメです。1997年、1998年時点のフランスW杯開催前の時点で既に次のW杯は日韓共同開催されることが決まっていて、その時、日本はまだW杯本選に出場したことがなかったんですよ。作中で監督がフランスW杯出場を賭けて熱弁をふるうセリフで「(フランスW杯に出られなかったら)弱き国、日本は金の力でワールドカップに初出場した。世界中からそう言われることになるんだぞ!」というのがあるんですがこれは本当に伝説級のセリフだと思う。当時フィジカルコンディションとか、メンタルとか、ナショナリズムとか、そういうところまで描かれてるサッカー漫画ってなかったのに、そのあたりまで踏み込んで描かれてるのでとてつもないリアリティ。ストーリーも少年漫画の王道を踏み外してないんだよ。かつての強敵が味方になったり、仲間が敵になったりとかね。その上、恋愛要素もキッチリ入れてくる。うーん。すごい。スポーツものなら他に『おおきく振りかぶって』とか『高校球児ザワさん』も好きですが、ザワさんは高校の野球部に入ってる体育会系の女の子の生活を描くフェチマンガみたいなものなのでちょっと違うか。

知略・ギャンブルものなら『カイジ』シリーズ、『賭博覇王伝 零』『銀と金』『哲也 -雀聖と呼ばれた男』とか。『嘘喰い』も読んでますが超バイオレンスで絵がうまいだけに恐ろしい。カイジの利根川の焼き土下座が圧倒的画力で再現されると思ってもらえればわかりやすいですね。実際『嘘喰い』作中で、負けると鉄でできた牛の中で蒸し焼きにされるゲームとかもあります。

4コマ漫画は『伝染るんです』『クマのプー太郎』『B.B.Joker』あたり。恋愛ものなら『僕等がいた』と『最終兵器彼女』かな。セカイ系代表『最終兵器彼女』はついこの前読み直したばっかりですが、やっぱりせつねぇー。超せつねぇー。読むなら高校生くらいのうちに一回読んでおくべきです。あの頃に触れるのと、大人になってから初めて読むのとでは破壊力が段違い。

『最終兵器彼女』のあとは、古泉智浩『ジンバルロック』でさよならしましょう。GOING STEADYのシングル「童貞ソーヤング」のジャケット描いた人の漫画です。GOING STEADY好きな男子が読んだらきっと気に入るんじゃないかなぁ。無気力だが性欲ほとばしる男子高校生の世にもくだらない生活です。主人公は剣道部に所属してるので一応大会とか出てるんですが、面倒だからってさっさと負けるんですよ。でも後輩ですごいやる気のあるヤツがいて、個人戦でそいつが勝ち進んじゃうんですね。大会は何日かに分けて行われるので「明日は日曜なのに!あいつが次も勝ったら、明日も来なきゃいけない!」ってことになって、相手選手の応援したりとかして。結局その後輩は「あの人たち、相手選手の応援してないか?」って事に試合中に気づいちゃって、集中が切れて負けてしまうんですけど、まあそんな流れで負けたらキレるに決まってるじゃないですか。そのやる気のある後輩から「稽古もサボってばっかりで、剣道なんだと思ってるんだよ!」と言われた主人公の、返しのセリフでおわかれしましょう。

 

「オレ達が好きこのんで剣道やってるとでも思ってんのか?
オレ達が 剣道やってるのは
ただ なんとなくだ」

 

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2014-03-08 | Posted in DialoguesComments Closed 

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